「アウティング」とは、あまり聞きなれない言葉ではありますが、そもそもは本人のセクシュアリティ(とくにセクシュアルマイノリティー性)について、本人の意思とは関係なく、または本人の同意なく、第三者がほかの第三者に伝えることを指します。(カミングアウトは自分の意思をもって自分が他人に表明することを言いますので、アウティングとは異なります。)
そして、「妊娠アウティング」とは、職場などで本人が【妊娠したこと】を第三者により勝手に言いふらされる、言い伝えられることを指します。本人の妊娠に関する噂話などもアウティングとみなされる要素があり、それらにより悩まされる女性やそのパートナーの方もいらっしゃるかと思います。
妊娠とは、たしかにおめでたいこと、お祝いしたいこと、とされる風潮が日本ではメジャーな部分ではありますが、昨今のセクシュアリティ、ジェンダー論、またはハラスメント防止の観点からは、非常にパーソナリティーがあり、かつセンシティブな情報・要素なため、配慮は必要になるかと思います。
今までは、マタニティーハラスメントにおいて、妊娠アウティングについての議論が活発であったとは言えない事実があるものの、妊娠の事実が個人のプライバシーに属する保護すべき情報であると考える方が増えてきたことや、妊娠したことを自分自身の言葉で自分の思った大切な人などに伝えたいと思っている女性が一定数いたという事実が、この言葉の生まれた背景なのでしょう。
また、不妊治療中の女性や、独身の従業員の目線に立ってみると、他人が妊娠したことを自分にとってネガティブに捉えてしまう方もいらっしゃるのも事実かと思います。妊娠アウティングする側は、とくに意識はしていないことが多いかと思いますが、知る権利・知らない権利のためにも本人から伝える、本人の情報をどこまで広めていいかのコントロールをすることが大切なのではないでしょうか。
とはいえ、職場において、妊娠した従業員を抱えることは、その後の産休・育休・子育てや両立支援に直結します。また、当該従業員の不在中に周りの同僚たちの負担が増えることにも大きく関係しますので、従業員の妊娠の事実は適切に共有しなければなりません。マタニティーハラスメント防止にも配慮しつつ、その事実を公表することの影響は難しい部分もあるかと思いますが、お互いの気持ち、それぞれの想いに寄り添った対応ができれば、問題を最小限にすることができるのではないかと思います。
今一度、マタニティーハラスメントについて考える機会になれば幸いです。最後に、厚生労働省・雇用環境・均等部(室)のハラスメント対策資料のリンクを示しますので、ご参照ください。
職場におけるセクシュアルハラスメント・マタニティーハラスメント対策について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000137179.pdf
当事務所では、ハラスメントに関するご相談を承っておりますので、各種ハラスメント対策などについてご懸念のある事業主の方は、お問い合わせフォーム等によりお気軽にお問い合わせくださいませ。